オペラ絵本とは
オペラ絵本とは、台本を基に作成した絵を100インチ程度の映写幕にプロジェクターで投影し、かつ、台本を基に作曲されたものをオペラ歌手と奏者が演奏する「オペラ」と「絵本」との要素を融合した藝術である。
オペラ絵本は、地域にまつわる民話などを地域、市民活動団体、行政が連携し上演時間20~40分程度の台本を創り、その台本を基に「絵本」となる絵と、台詞に叙情を伝える曲を創り「オペラ」仕立てにしている。絵から色や描かれた内容から情景を想像し、オペラ歌手の華麗な歌唱力と臨場感溢れる躍動する演奏を体感することで、いつしか民話の主役となり変わり、声の持ち主となる疑似体験ができる技法であり、「豊かな心」を育む手段のひとつである。
変化の激しいこれからの社会を生きるために必要な「生きる力」は、「確かな学力」、「豊かな心」、「健やかな体」とされており、身近な図書館や公共施設においてオペラ絵本が開催されることで、貧困な家庭であっても気軽に参加でき「生きる力」を育むことができる。このような事からオペラ絵本は現代社会の課題解決に繋がると考えられる。
現代の子ども達が音楽専門家を志す進学先として、音楽高校、音楽大学、音楽専門学校、音楽留学とこれまでの音楽家への道に進む子どもが少なくなってきている。これに伴いオペラを専門とする団体の会員数が減ると同時に、人口減少、少子化がさらにこの専門分野の存続を左右する時代に突入したと考えられる。また、オペラの制作にかかる経費は、家を一軒建てることができるほどである。オペラ公演とオペラ絵本が完成するまでの制作日数や必要経費を比較してみると添付資料「比較表」のようになっている。
オペラ公演は専門性が高く費用も時間もかかり入場料が高額となるが、オペラ絵本は費用も時間も入場料も少なく身近な場所で実現でき、気軽に体験できる藝術であることが言える。
オペラ絵本を企画・制作し、施設や活動団体等をコーディネートする“ひと”を育てることが課題である。また、オペラを作曲することのできる作曲家が少ないのも課題であり、最初は叙情的な台詞を曲にした歌曲を作曲するに留め、歌唱と台詞が混在するオペレッタの形式とすることで、開催することが重要である。
岐阜県揖斐郡池田町にて「特定非営利活動法人ぶんかのタネ」により制作され、民話の情報を集めるにあたり学識者、役場の学芸員の知識から学び、このような生涯学習を経てひとつの学びの成果を形にしている。民話を題材としたオペラ絵本「かすみの渓の一助」は、紙芝居の要素、読み聞かせの要素を重視することで、台本をすべて歌にするのではなく、言葉の叙情、間合い、喜怒哀楽を感じやすくするため、セリフと曲で構成されたオペレッタの形式である。
地元の池田高等学校演劇部有志らがオペラ絵本に出演し継承することは、ふるさとを守る活動とも言い換えられ、世代を超え3世代をまたぎ親から子へ、祖父母から孫へと地域にまつわる民話をパッケージ化することで、後世に語り継がれまちの財産となる。
(参考文献)
・浅井経子 編著『生涯学習概論』株式会社理想社、2014年(平成26年)3月1日
・浅井経子/合田隆史/原義彦/山本恒夫 編著『地域をコーディネートする社会教育』株式会社理想社、2015年(平成27年)3月31日
・公益財団法人音楽鑑賞振興財団、監修:加藤浩子(音楽評論家)
「オペラ鑑賞のまえに」「オペラの歴史」より
・揖斐郡池田町/『桜の名所 霞間ヶ渓』
・『鎌ヶ谷から霞間ヶ渓へ』
・「公益社団法人関西二期会」
・「特定非営利活動法人ぶんかのタネ」